メタバース記事 2021.04.24

【建築でのブロックチェーン活用事例】今話題のNFTをSketchUpで作成する方法

text:
Hiroki Tanaka

2020年の終わりから、非常に大きな話題となっているNFTですが、建築データでも応用ができる考えと、Urthで実験を行っています。

NFTは、端的に言うとデータに正当な価値をつける装置です。これを活用することで、実際に施工されなかった構想段階の建築データや学生中の課題で作成したデータ、さらにはボツになった案やコンペで敗れた案など、現在では価値がないとみなされ、個人のパソコンに眠っているデータが価値をもち、それを売買することで次回以降の創作へとつながるきっかけを生み出す画期的な試みができます。

今回は、NFTで使用できるgltfデータ形式とglb形式の作成をSketchUpで行う方法を紹介します。
NFTの作成ではなく、SketchUpからgltfデータglbデータを出力する方法のみを知りたい形はこちら

NFTとは?

mars house

NFTで建築分野で最近話題となったのは、この作品ではないでしょうか。こちらの作品、Krista Kim氏が作成した「マーズハウス(Mars house)」というヴァーチャル建築です。これは約5千万円で売却され、海外で話題になりました。このように、ここ数週間で、アート作品が数千万ドルで売却されたり、著名ロックバンドが最新アルバムをリリースしたりしたことにより、NFTは大きな注目を集めています。

まずNFTとは、

暗号資産(仮想通貨)の基本技術として知られるブロックチェーン(分散型台帳)に存在するデジタル資産

のことです。

ブロックチェーンは公共性のある台帳で、誰でもその資産の真正性や所有権を証明することができるツールです。

そのため、ブロックチェーンに紐付けられたデジタルデータは、無制限に複製が可能なほとんどのデジタル資産とは違い、固有のデジタル署名を持ち、「唯一無二」となります。

このブロックチェーンで紐付けられたデジタル資産に暗号資産(多くは、「イーサリアム」)で価値を結び付け取引されています。その取引記録も、ブロックチェーンに取引記録が残るため、NFTの作品は誰でも見ることができますが、購入者は正式な所有者としてのステータスを手に入れることができるのです。

SketchUpの建築データをNFTにする方法

データに唯一無二の証明書をつけることで、模倣できないようにし、本来の価値を引き出すNFTですが、これは多くのデータ形式を扱う建築分野にも応用できるのではないでしょうか。

建築では、BIMの活用が広まり多くの3Dデータが存在しています。しかしながら、データそのものの価値や所有権、データの保護をしながらの活用はいまだ不十分であるのが現状です。そこで、弊社でも研究を進めていますが、CADデータなどをブロックチェーンに紐付けることで、データの信用や竣工後の3Dデータ保管および活用につながることが期待されます。

そのデータ活用の先駆けとして、実際に建築のCADデータをブロックチェーンに紐付けNFTとしてみることをUrthでは実験しています。前回の実験では、rhinocerousで作成した設計データをNFTとしましたが、今回はSketchUpで作成したデータではいけるのかを検証しました。

NFTの作成では、世界最大NFTマーケットプレイスであるOpenseaを用いて、行っています。

https://u-rth.com/nft_gltf_glb_rhino/

SketchUpデータのNFT化手順

  1. Openseaアカウントを作成する
  2. CADからglbデータ形式もしくはgltfデータ形式を出力する
  3. Openseaにアップする

一つ上の章で、やたら難しくブロックチェーンを説明しましたが、ブロックチェーンは近年開発が大きく進み、プログラミングの専門知識がなくとも、簡単に作成することができます。その代表格がOpenseaです。

1.Openseaのアカウントを作成

Openseaにアップするには、アカウントが必要となります。この手順は、opensea側で詳しく解説があるので、そちらを参考にしてみてください。

Openseaの使い方

Chromeの拡張機能のMeta Maskが必須となります(ここがすこし難しい)がそれ以外は基本的に一般的なサービスの登録と同程度の単純さです。

2.SketchUpからglbデータ形式もしくはgltfデータ形式を出力する

ここが最大の難関といっても過言ではないと思います。SkechUpをはじめRevit,Rhinocerousなどあまたある建築のCADですが、ここからOpenseaにデータをアップするには、データ形式を整えなければいけません。CAD間をデータ移行するのと同じように特定のデータ形式とすることで、データをNFT化することができます。

そのデータ形式がglbデータ形式もしくはgltfデータ形式です。これは、web上で3Dデータを表示する際に多く用いられる形式で、基本的な建築のCADではデフォルトで出力することはできません。

そこで、GitHubなどから、glbデータ形式もしくはgltfデータ形式を出力するためのプラグインを見つけて導入する必要があります。

今回はSketchUpで作成したので、プラグインを探し、導入しました。
筆者が探した中では次のプラグインがありました。

1.simlab

このプラグインはSimlabが提供しているプラグインです。ほかのSketchUpのプラグインも開発してあり、簡単にダウンロードと利用ができるところが強みです。

対応するSketchUpのヴァージョン
SketchUp 2013, 2014, 2015, 2016, 2017, 2018, and SketchUp 8 on Windows.

料金
体験は無料(30回までは無料でglb,gltfデータを出力できます)
99ドル(30回目以降はライセンスが必要で、99ドルで2つのデバイスに入れることができます)

このプラグインのダウンロードはこちら

2.glTF Export

このプラグインはExtension Warehouseが提供しています。無料で使えるところが強みです。

対応するSketchUpのヴァージョン
SketchUp 2016以降(MacおよびWindows)

料金
完全無料(オープンソース

このプラグインのダウンロードはこちら
こちらにリンクから最初にサインインすることでダウンロードできるようになります。

また、このプラグインでは、ほかのSketchUpプラグインとのコラボレーションが可能であり、次のプラグインはコラボとしておすすめです。

SketchUpでのレンダリングをより美しく!できるプラグイン「Free PBR extension」はこちら
このプラグインでは、gltf Exportと併用することで、高品質な3Dデータを出力することができます。

Free PBR extensionなしでのモデル
Free PBR extensionありでのモデル

このプラグインは次のような手順で利用できます。

  1. SketchUp 2017以降のモデルかをチェック.
  2. glTF Exportをダウンロード
  3. SketchUcation PluginStoreから最新のPBR pluginをダウンロード

上の二つのインストールに関してわからない場合はこちらのガイドを読みましょう

ダウンロードおよびインストールが完了すると”Physically-Based Rendering”がメニューバーに現れ、 “PBR” がツールバーに出てきます。

ここから先はオプションですが、PBR Material Libraryをインストールできます。マテリアルデータの素材gあたくさん手に入ることで高画質な3Dデータを作成できます。

  1. sketchup_pbr_material_lib.zipをこちらのリンクからダウンロード
  2. MACユーザーの場合 zipファイルの展開先を: ~/Library/Application Support/SketchUp 2017/SketchUp/Materials
    Windowsユーザーの場合 .zip の展開先を: %AppData%\SketchUp\SketchUp 2017\SketchUp\Materials
    としましょう
  3. SketchUpを再起動

もしこのインストールやダウンロードで分からない場合は、より詳細なデータは下のリンクから確認できます。

https://github.com/SamuelTS/SketchUp-PBR-Plugin#how-to-install-this-plugin

SketchUp以外でも、プラグインを用いることで、glbデータ形式もしくはgltfデータ形式を出力することはできますので、調べてみてください。Urthでは、次回はAutoCADでの利用を試してみます。
ライノセラスで利用方法はこちら

もう一つ、glbデータ形式もしくはgltfデータ形式を出力する方法があります。近年、建築の分野でも利用する人が増えているblenderを用いることで、二つのデータ形式を出力することができます。blenderは、建築ではよくレンダラーとして用いることが多いかと思いますが、そのblenderでは、2.8モデルからglbデータ形式もしくはgltfデータ形式でデータを出力する機能が標準で備わっています。そのため、blenderをもちいることで、レンダリングを行いながら、3DデータをNFT化することも可能です!

blenderに関してはこちら

3.Openseaにアップする

手順2まで、進めば残りは非常に単純です。Openseaに示される手順に従って、データをアップし、ブロックチェーンと紐付けるデータの説明を入力します。

実は、このデータの説明が非常に重要です。ここに、誰がどのような目的で、なぜデータをブロックチェーンと紐づけたのかを記述することで、そのブロックチェーンのデータの価値は大きく変化するでしょう。

例えば、

卒業を記念して卒業式の日に卒業設計のデータをアップした

といったデータはNFTとしてのプレミアはつきやすいと考えられます。

また、データの保管でも、誰がいつ、どのような目的でデータをアップしたのかを明確にし、保証データを付属することで、そのデータへの信用性は大きく上昇するでしょう。(実際にOpenseaでは、アップした人が身分を偽るなどの詐欺が発生しています)


今回は、話題のNFTに限って建築データをブロックチェーンに紐付ける方法を特集しました。なかなか建築分野の人には聞きなれないブロックチェーンですが、今後CADデータの活用や建物のライフサイクルを通したデータ管理では、必須の技術となると考えられます。NFTをきっかけにデータ管理の方法にも興味をもってもらえれば幸いです。

今回は、作成方法に偏って情報を記載しましたが、NFTの魅力は何といっても、データに正当な値段が付く部分です。建築では、多くの作品が構想の段階でとどまったり、課題や卒業設計などで実現せず、個人のパソコンに眠ったままとなるデータが多く発生する分野です。そんなデータを、NFT化しておくことで、将来自分が建築分野でレベルアップし、独立する際などに、学生の間に設計してきたデータやコンペで次点となり実現しなかったデータが大きな価値を見出され、次の創作へとつながっていくような世界が実現されることは非常に面白いのではないでしょうか。

最後に、少しだけ宣伝を…

弊社では、アップロードしている人の身分の詐称ができてしまうという問題点をかかえるOpenseaで、身分証明データとCADデータを掛け合わせてブロックチェーンとすることで、データの信用度や価値を上げるサービスを行っています。普段使っているCADデータの送信とアップロード者の情報登録のみで利用いただけるサービスとなっていますので、興味を持たれた方はぜひお問い合わせください!

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