text:
Hiroki Tanaka
ここ、数週間で非常に大きな話題となっているNFTですが、建築データでも応用ができるのではないかと、Urthで実験してみました。
まず、NFTって何??となる方も多いと思いますので、そこからご紹介します。(筆者も専門分野ではないので、間違えた情報も入っているかもしれません。誤りを見つけた方はコメントしていただければ幸いです。)
NFTは、端的に言うとデータに正当な価値をつける装置です。これを活用することで、実際に施工されなかった構想段階の建築データや学生中の課題で作成したデータ、さらにはボツになった案やコンペで敗れた案など、現在では価値がないとみなされ、個人のパソコンに眠っているデータが価値をもち、それを売買することで次回以降の創作へとつながるきっかけを生み出す画期的な試みができます。
卒業を記念して、卒業設計のデータをNFT化し、それにより、将来自分が独立などチャレンジをする際の支えとなるなど、いままでにない素敵なデータ活用ができます。
NFTとは?
NFTで最も有名な作品はこちらではないでしょうか。こちらの作品、デジタルアート作家「ビープル」ことマイク・ウィンケルマン氏によるコラージュ作品、「EVERYDAYS: THE FIRST 5000 DAYS」は、約75億円で売却され、現存アーティストのオークション記録第3位となりました。このように、ここ数週間で、アート作品が数千万ドルで売却されたり、著名ロックバンドが最新アルバムをリリースしたりしたことにより、NFTは大きな注目を集めています。
ここで、一つのjpgデータになぜそのような価値が出るのか、わけのわからない方も多いかと思います。
まずNFTとは、
暗号資産(仮想通貨)の基本技術として知られるブロックチェーン(分散型台帳)に存在するデジタル資産
のことです。
ブロックチェーンは公共性のある台帳で、誰でもその資産の真正性や所有権を証明することができるツールです。
そのため、ブロックチェーンに紐付けられたデジタルデータは、無制限に複製が可能なほとんどのデジタル資産とは違い、固有のデジタル署名を持ち、「唯一無二」となります。
このブロックチェーンで紐付けられたデジタル資産に暗号資産(多くは、「イーサリアム」)で価値を結び付け取引されています。その取引記録も、ブロックチェーンに取引記録が残るため、NFTの作品は誰でも見ることができますが、購入者は正式な所有者としてのステータスを手に入れることができるのです。
実際に、「EVERYDAYS: THE FIRST 5000 DAYS」を落札したMetakovan氏は今回の落札について、
「技術は再現可能だが時間だけはデジタルでハックできない。この作品こそがいまの時代においてもっとも価値のある芸術作品であり、10億ドルの価値がある」
としています。
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建築データをNFTにする方法
データに唯一無二の証明書をつけることで、模倣できないようにし、本来の価値を引き出すNFTですが、これは多くのデータ形式を扱う建築分野にも応用できるのではないでしょうか。
建築では、BIMの活用が広まり多くの3Dデータが存在しています。しかしながら、データそのものの価値や所有権、データの保護をしながらの活用はいまだ不十分であるのが現状です。そこで、弊社でも研究を進めていますが、CADデータなどをブロックチェーンに紐付けることで、データの信用や竣工後の3Dデータ保管および活用につながることが期待されます。
今回の実験では、そのデータ活用の先駆けとして、実際に建築をCADデータをブロックチェーンに紐付けNFTとしてみました。NFTの作成および取引場をサービスとして提供するOpenseaを用いて、rhinocerousで作成した設計データをNFTとしました。
建築データのNFT化手順
- Openseaアカウントを作成する
- CADからglbデータ形式もしくはgltfデータ形式を出力する
- Openseaにアップする
一つ上の章で、やたら難しくブロックチェーンを説明しましたが、ブロックチェーンは近年開発が大きく進み、プログラミングの専門知識がなくとも、簡単に作成することができます。その代表格がOpenseaです。
1.Openseaのアカウントを作成
Openseaにアップするには、アカウントが必要となります。この手順は、opensea側で詳しく解説があるので、そちらを参考にしてみてください。
Chromeの拡張機能のMeta Maskが必須となります(ここがすこし難しい)がそれ以外は基本的に一般的なサービスの登録と同程度の単純さです。
2.CADからglbデータ形式もしくはgltfデータ形式を出力する
ここが最大の難関といっても過言ではないと思います。AutoCADやRevit,Rhinocerousなどあまたある建築のCADですが、ここからOpenseaにデータをアップするには、データ形式を整えなければいけません。CAD間をデータ移行するのと同じように特定のデータ形式とすることで、データをNFT化することができます。
そのデータ形式がglbデータ形式もしくはgltfデータ形式です。これは、web上で3Dデータを表示する際に多く用いられる形式で、基本的な建築のCADではデフォルトで出力することはできません。
そこで、GitHubなどから、glbデータ形式もしくはgltfデータ形式を出力するためのプラグインを見つけて導入する必要があります。
今回はrhinocerous7で作成したので、food4rhinoからプラグインを探し、導入しました。
今回利用したプラグインはこちら
rhino以外でも、プラグインを用いることで、glbデータ形式もしくはgltfデータ形式を出力することはできますので、調べてみてください。
もう一つ、glbデータ形式もしくはgltfデータ形式を出力する方法があります。近年、建築の分野でも利用する人が増えているblenderを用いることで、二つのデータ形式を出力することができます。blenderは、建築ではよくレンダラーとして用いることが多いかと思いますが、そのblenderでは、2.8モデルからglbデータ形式もしくはgltfデータ形式でデータを出力する機能が標準で備わっています。そのため、blenderをもちいることで、レンダリングを行いながら、3DデータをNFT化することも可能です!
blenderに関してはこちら
3.Openseaにアップする
手順2まで、進めば残りは非常に単純です。Openseaに示される手順に従って、データをアップし、ブロックチェーンと紐付けるデータの説明を入力します。
実は、このデータの説明が非常に重要です。ここに、誰がどのような目的で、なぜデータをブロックチェーンと紐づけたのかを記述することで、そのブロックチェーンのデータの価値は大きく変化するでしょう。
例えば、
卒業を記念して卒業式の日に卒業設計のデータをアップした
といったデータはNFTとしてのプレミアはつきやすいと考えられます。
また、データの保管でも、誰がいつ、どのような目的でデータをアップしたのかを明確にし、保証データを付属することで、そのデータへの信用性は大きく上昇するでしょう。(実際にOpenseaでは、アップした人が身分を偽るなどの詐欺が発生しています)
今回は、話題のNFTに限って建築データをブロックチェーンに紐付ける方法を特集しました。なかなか建築分野の人には聞きなれないブロックチェーンですが、今後CADデータの活用や建物のライフサイクルを通したデータ管理では、必須の技術となると考えられます。NFTをきっかけにデータ管理の方法にも興味をもってもらえれば幸いです。
今回は、作成方法に偏って情報を記載しましたが、NFTの魅力は何といっても、データに正当な値段が付く部分です。建築では、多くの作品が構想の段階でとどまったり、課題や卒業設計などで実現せず、個人のパソコンに眠ったままとなるデータが多く発生する分野です。そんなデータを、NFT化しておくことで、将来自分が建築分野でレベルアップし、独立する際などに、学生の間に設計してきたデータやコンペで次点となり実現しなかったデータが大きな価値を見出され、次の創作へとつながっていくような世界が実現されることは非常に面白いのではないでしょうか。
最後に、少しだけ宣伝を…
弊社では、アップロードしている人の身分の詐称ができてしまうという問題点をかかえるOpenseaで、身分証明データとCADデータを掛け合わせてブロックチェーンとすることで、データの信用度や価値を上げるサービスを行っています。普段使っているCADデータの送信とアップロード者の情報登録のみで利用いただけるサービスとなっていますので、興味を持たれた方はぜひお問い合わせください!
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