メタバースの将来性は、「有望」か「オワコン」かの2択では読み誤ります。2021年ごろの話題性は失われましたが、利用者数を伸ばし続けている領域もあります。伸びたところと縮んだところが、はっきり分かれたというのが実態です。
この記事では、公的資料の市場予測を示したうえで、伸びている領域と縮んだ領域を分けて整理し、企業がいま取り組む価値があるかを判断する軸をまとめます。
メタバースの将来性を市場予測から読む
総務省の『情報通信白書』が引用するStatistaの推計では、世界のメタバース市場は2025年の1,036億ドルから2030年に5,078億ドルへ、日本市場は7,998億円から3兆8,759億円へ拡大すると予測されています。
この数字を読むうえで重要なのは、白書が「市場を牽引するのはハードウェアではなく、主に消費者向けのメタバースサービス」としている点です。最大の分野はeコマースで、次いでゲーム、ヘルスケア・フィットネスが続くとされています。
つまり、市場の伸びを支えると見られているのは、法人向けの空間制作ではなく、消費者が空間の中でお金を使う動きです。自社がどの層に入るのかによって、この数字の意味は大きく変わります。
なお、これらはすべて予測値です。調査機関ごとに対象範囲が違うため、別の調査と並べると桁が変わることもあります。数字そのものを根拠にするのではなく、「この規模を見込む推計がある」という背景説明として扱うのが安全です。
将来性が見込めるメタバースの領域
ゲーム型の大規模プラットフォーム
利用者数で見ると、上位は一貫してゲーム寄りのプラットフォームです。Robloxは2025年第4四半期時点で1日あたり1億4,000万人規模が利用しています。利用者自身がコンテンツを作り、それが人を呼ぶ構造ができているのが強みです。
この層は、企業が自社で用意する空間とは桁が2つ以上違います。市場が伸びているという話の大半は、この領域のことを指していると考えてよいでしょう。
業務に組み込まれた法人利用
採用説明会、社内研修、常設の相談窓口など、毎年・毎月繰り返す業務に組み込まれたものは続いています。派手さはありませんが、費用を実施回数で割れるため、続けるほど割が良くなる構造です。
体感が価値になる用途
危険作業の研修、大型設備の操作練習、完成前の建物の内覧など、写真や文字では代替できない用途です。対象者が限られ、機器をこちらで用意できる場面なので、機器の普及率が障害になりません。
縮小したメタバースの領域
話題づくり目的の企業空間
2021〜2022年に立ち上がった企業のメタバース施策には、すでに終了したものが数多くあります。公開直後は報道されても、2回目以降に来る理由がなく、更新が止まったまま閉じられたパターンが典型です。
ブロックチェーン前提のモデル
仮想の土地やアイテムの売買を中心に据えたサービスは、期待された規模には届いていません。利用者数で見ると、ブロックチェーンを使わないプラットフォームのほうが一貫して主流です。
VR機器を前提にした一般向けサービス
機器の保有率が伸びないままなので、対象が狭い状態が続いています。熱心な利用者は定着していますが、人数を集めること自体を目的にすると噛み合いません。
メタバースが「オワコン」と言われる理由
最大の理由は、期待が先行しすぎたことです。2021年ごろは「数年で生活の中心になる」という説明が広く流れました。その水準と比べれば、現在地ははるか手前です。
ただし、期待が下がったことと、技術や用途が消えたことは別です。報道が減った分だけ、実際に使っている現場が見えにくくなっています。「流行としては落ち着き、用途としては残った」と捉えるのが実態に近いです。
企業がいまメタバースに取り組む価値はあるか
取り組む価値があるケース
繰り返し実施する業務があり、その中で「その場にいる感じ」が効く場面。遠方の対象者に届けたいという課題がある場合。この2つが重なるなら、いま始めても遅くありません。話題性が落ち着いている分、調達費用も落ち着いています。
見送ったほうがよいケース
目的が「話題になりそうだから」だけの場合、または伝えたい内容が文字と写真で済む場合です。後者なら、Webページや資料の改善のほうが費用対効果は優れます。
判断の目安
「既存の手段で解けなかった理由」を1行で説明できるかどうか。これが言えるなら、小さく試して判断する価値があります。言えないうちに空間を作ると、更新が止まって終わる可能性が高くなります。
メタバースがこれから伸びるかを見るポイント
白書は成長要因として、XRデバイスの普及、AI技術の発展、メタバースの認知拡大を挙げています。いずれも条件つきの要因です。特に機器の普及は、この数年伸び悩んでいる部分です。
自社の判断材料にするなら、市場規模より「自社が届けたい層が、実際にどの空間にいるか」を調べるほうが役に立ちます。層がいなければ、市場が伸びても自社の施策は届きません。
メタバースの将来性に関するよくある質問
メタバースは終わったのですか?
終わってはいません。話題性だけを狙った施策の多くは終了しましたが、ゲーム型の大規模プラットフォームは利用者を増やし続けています。全体をひとつの答えで語ると、どちらにも外れます。
いまから参入するのは遅いですか?
用途がはっきりしている分、むしろ判断しやすくなっています。続いている事例と終了した事例の両方を見られるのも、当時にはなかった利点です。
将来性を上司に説明するには?
市場規模だけでは「で、自社には関係あるの?」と返されます。自社の課題、それをメタバースで解く理由、小さく試す範囲と費用、やめるときの基準。この4点をセットで示すと、市場の話だけより通りやすくなります。
まとめ:メタバースの将来性は領域ごとに判断する
メタバースの将来性は、領域ごとに分けて見ると判断できます。ゲーム型の大規模プラットフォームと、業務に組み込まれた法人利用は続いています。一方で、話題づくり目的の空間や、機器を前提にした一般向けサービスは縮んでいます。
市場予測は背景説明には使えますが、自社の投資判断の根拠にはなりません。「繰り返し使う業務があるか」「その場にいる感じが効くか」「既存の手段で解けない理由を言えるか」。この3つで判断してください。
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