「保険業界でメタバースを活用したいんだけど、どのように使うのが最適なんだろう」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか?
本記事では、保険業界で行われた9つの事例をもとに「何を狙ってメタバースを導入したのか」「どのように使えばいいのか」を解説します。
各事例の解説は、2020年から法人向けメタバースサービス「V-air」を展開している株式会社Urthの代表取締役である田中大貴が行っています。
メタバース業界の最前線にいるからこその一次情報に基づいた正確な解説ですので、自社でメタバースを活用するかどうかの判断にご活用ください。
コミュニティの形成を狙った事例
本記事では、事例を紹介した後に解説するので、具体的なイメージをもちながらどのように使えばいいのかが理解できる構成となっています。
まずは弊社のメタバース「V-air」を導入した事例を紹介します。
そもそもメタバースとは「いろんな人とコミュニケーションできる仮想の空間」のこと。他者と交流するコミュニティを形成するうえでメタバースの利用は最適です。
コミュニティを形成するためにはどのようにメタバースを使えばいいか具体的にイメージできるように事例から紹介しますのでぜひご覧ください。
事例1.プロエージェント
保険代理店である株式会社プロエージェントは、弊社のメタバースサービス「V-air」を導入しました。V-airは、Webブラウザからすぐにアクセスできるメタバースです。
プロエージェントは、スタートアップや親子向けなど幅広い顧客層に合わせたイベントを開催する会場としてV-airを活用しています。
どのように使っているかや実際の使用感などは「【メタバース×保険代理店】V-airによる新規顧客の獲得」で詳しく説明しています。
解説「メタバース上でイベントを開催してコミュニティを作る」
田中:プロエージェントさんは、法人向けの保険代理店ということもあり、交流会で営業することが多かったそうです。しかし、スタートアップ企業やベンチャー企業の経営者は若い世代が多く、交流会を開催してもなかなか参加してもらえませんでした。
そこで、代わりになる経営者との交流の場としてメタバースを導入しました。メタバース上でイベントを開催すれば、パソコンやスマホからアクセスするだけなので気軽に誘えます。招待された方も、自宅から簡単に参加できます。
大前提として、メタバース上で開かれるイベントそのものが魅力的でなければ、そもそも顧客から興味を持ってもらえません。ターゲット顧客である経営者にどんなニーズがあるかを分析し、それに合わせたイベントを開催できるかどうかが重要です。
例えば、スタートアップ企業の経営者は、ほかの経営者ともつながりたいと思う方も多いです。そういった方に「経営者同士が集まるメタバースイベントがある」と伝えれば、メタバースにアクセスしてくれるでしょう。
そのイベントから経営者同士が集まるコミュニティが形成されれば、外から新たな経営者が来てくれるという好循環も生まれます。メタバースは、コミュニティを形成し、継続的に顧客と関わりを持てる場も作れます。
顧客認知を狙った事例
ここでは、メタバースの若いユーザーが多いという特性を利用して、顧客認知を狙った事例を4つ紹介します。
各企業が利用しているメタバースプラットフォームは異なりますが、顧客認知を目的として導入してるため、解説をひとつにまとめました。自社で顧客認知に特に力を入れたいと思っている方はぜひご覧ください。
事例2.三井住友海上火災保険
三井住友海上火災保険株式会社は、自社のメタバースプロジェクトの一環として株式会社HIKKYが運営する世界最大のメタバースイベント「バーチャルマーケット」に出展しました。
バーチャルマーケットは、夏と冬の年2回、メタバース上で開催されるイベントです。このイベントでは、アバターや3Dアイテムから現実で使える商品などが販売・購入できます。現実で言うところのお祭りに近いです。
毎回100万人近くのユーザーが訪れており、バーチャルマーケットを楽しみにしている方も多く、メタバース業界の風物詩といっても過言ではありません。
保険だけでなく、食品やアパレルなどさまざまな業界の企業が出展しています。三井住友海上火災保険は、2022年に夏と冬に保険業界初の試みとして出展しました。
近未来都市の世界観でのタワーディフェンスゲームやクイズなどを開催し、保険に詳しくないユーザーにも楽しめるイベントを提供しました。
事例3.あいおいニッセイ同和損保
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社は、月間アクティブユーザー数が7,000人を超えるメタバースゲーム「Fortnite(フォートナイト)」 上にワールドを制作しました。ワールドとはメタバース上の空間のことです。
株式会社NEIGHBORと共同で制作したワールドは、サイバーパンク風の世界観になっています。ゲーム内容は、主人公が世界の崩壊を阻止するために、建物の最上階を目指すというもの。Fortniteでプレイできることもあってゲーム性が高く、ユーザーの体験を重視した事例です。
事例4.明治安田生命
明治安田生命保険相互会社はメタバースプラットフォーム「cluster(クラスター)」上に「明治安田生命バーチャルスタジアム」を制作しました。
明治安田生命バーチャルスタジアムでは「健康⚪︎×クイズ」や「脳トレ宇宙ステーション迷路」など計5種類のコンテンツが楽しめます。東京ゲームショウに出展した際には、Vtuberの「周央サンゴ」やお笑い芸人の「ぺこぱ」とコラボしました。
さらに、スタジアム内ではJリーグの試合映像をリアルタイムで流すことで、メタバース上にいるユーザー同士で盛り上がれるイベントも定期的に開催されています。
事例5.楽天生命
楽天生命保険株式会社は三井住友海上火災保険と同じくバーチャルマーケットにて、自社のワールドを出展しました。
フィットネスジムをモチーフにした建物内では、自分の分身であるアバターを操作しながら保険について学べるようになっています。
ほかにも、2階にあるボクシングリングでは障害物を避けるミニゲームで遊ぶことも可能です、屋上では3Dアイテムのプレゼントキャンペーンが開催されました。
解説「既存のメタバースを利用して顧客認知を狙っている」
田中:事例2〜5は、既存のメタバースプラットフォームを利用していますね。既存のプラットフォームを利用することで、そこに集まるユーザーに認知してもらうのが狙いです。
そもそも保険は、長い期間契約するもの。生命保険なら数十年単位の契約です。途中で保険商品を変えることはほとんどありません。一度契約していただければ、ずっと顧客のままなので、どれだけ早く顧客と接点を持ち、認知して貰えるかが重要になります。
メタバースを利用するユーザーは10代〜20代が大半です。これから保険を契約する層が集まっているので、早く認知を取りたい保険会社にとっては、適したプラットフォームといえるでしょう。
事例2〜5の各保険会社も、未来の顧客に認知してもらうために既存のプラットフォームを利用したのだと考えられます。
ただ、既存のプラットフォームを利用するだけでは認知は取れません。多くのユーザーが集まる場所でないと意味がないです。
メタバースで多くのユーザーを集めているのは、事例でも登場している「バーチャルマーケット」や「Fortnite」が挙げられます。ほかには「ROBLOX」や「ZEPETO」も多くの若いユーザーを集めています。
どの既存のメタバースプラットフォームを利用すればいいかを判断するポイントとしては、ユーザーの活動が盛んに行われているかどうかです。例えば「Fortnite」や「ROBLOX」は、ユーザー自身がワールドを制作して、自作のゲームを公開しています。
FortniteやROBLOXのようにクリエイターエコノミーを形成できているプラットフォームは、多くのユーザーが集まる傾向があります。認知を目的にメタバースを利用するなら、クリエイターエコノミー化が進んでいるかも見ておきましょう。
リアル店舗の代替として使用した事例
次に、メタバースをリアル店舗の代わりとして使用した事例を3つ紹介します。今までは、契約するために店舗を構えていた企業も多かったのですが、新型コロナの影響も相まって顧客が自宅で契約をしたいというニーズが出てきました。
現在は保険だけでなく、証券やクレジットカードなどの金融商品の契約もネットで完結できます。今後は自宅で契約を済ませるユーザーも増えてくるでしょう。自社の店舗をメタバース上に開設したいという方はぜひご覧ください。
事例6.東京海上日動
東京海上日動は、秋葉原を模したメタバース空間「Virtual AKIBA World」に「東京海上日動VAW保険相談所」を開設しました。スマホからもアクセス可能で、申し込みページで相談予約をすればメタバース上で保険の相談や加入のサポートを受けられます。
Virtual AKIBA Worldでは、保険相談所のほかに「VAW・空飛ぶカーレース」も開設。保険以外にもユーザーが楽しめるコンテンツを設置することで、気軽にアクセスできるようになっています。
事例7.朝日生命
朝日生命保険相互会社は、TOPPAN ホールディングス株式会社が運営するメタバースショッピングモール「メタパ」上に「朝日生命メタバース支店」をオープンしました。
メタパとは、ひとつのメタバースプラットフォームに複数のお店が集まったサービスで、実際に商品を購入できます。現実で言うところの百貨店やデパートに近いでしょう。
朝日生命メタバース支店は、可愛らしいキャラクターから保険について学べる店舗となっております。将来的には、FPへの相談や契約の手続きなどをメタバース上で行えます。
事例8.アフラック
アフラック生命保険は、メタバース上に「デジタルほけんショップ」を出店しました。アバターを操作して店舗内を探索できるほか、保険や健康に関する情報の収集やビデオ通話・リアル店舗での相談予約が可能です。
店舗内のカウンターにいるアバターにはチャットボットが搭載されており、保険について気軽に相談できます。
ほかのアバターとも会話が可能で、運動不足解消に役立つ情報やがんに関する情報など数十種類のコンテンツの中から、おすすめの情報をピックアップしてくれます。
解説「事例6〜8はリアル店舗の代替として利用している」
田中:事例6〜8は、リアル店舗の代替としても利用していると考えられます。コロナ禍のような、対面営業が難しいときの代替手段として使えますが、各保険会社の狙いはそれだけではありません。
日本は年々人口が減少しており、地方でのリアル店舗運営がコストになっています。しかし、メタバース上に代わりの店舗を出せば運営費が削減できます。地域関係なく誰でもアクセスできるのもメタバース上に店舗を出すメリットのひとつです。
また、自分が直接店舗に顔を出すのではなく、アバターを操作するのでスタッフと直接対面しない分、入店時のハードルも下がるでしょう。今まで店舗に足を運ぶのが億劫に感じていた方が、メタバースに店舗を出すことによって来店してくれるかもしれません。
リアル店舗の代替としてメタバース店舗に切り替える際に注意して欲しいのが、顧客に事前にお知らせすることです。
顧客や地域の方に知らせずに、いきなりリアル店舗からメタバース店舗に切り替えてしまうと「保険について聞きたかったのに店舗がない」といったようなトラブルを未然に防げます。この手のトラブルは顧客の信用に傷をつけかねません。
リアル店舗の代わりにメタバース店舗で保険の相談・契約ができることを事前に伝えることで、顧客の利用満足度も変わってきます。
成約率向上を狙った事例
最後にメタバースを成約率を上げるために活用した事例を紹介します。メタバースを利用して、集客する・顧客認知を上げる事例は本記事で紹介したように多くの企業が採用しておりオーソドックスな使い方です。
しかし、集客に成功しただけでは保険の成約につながりません。集客してからどのようにして成約まで持っていくのかが重要です。これから紹介するのは、メタバースを保険の成約につなげるために活用した事例です。
メタバースを集客するだけでなく成約率の向上にも活用していきたい方は、ぜひ参考にしてください。
事例9.かんぽ生命
株式会社かんぽ生命保険は自社メディア「子育て支援サイト」にメタバース空間を公開しました。Webからいつでもアクセスできる常設型のメタバースを導入するのは、生命保険業界では初の試みです。
ちいさいお子さんでも楽しめる「宝探し」や「ラジオ体操」が体験できます。ひとりで遊べるのはもちろん複数人でもアクセスできるので、親子や友達同士で一緒に楽しめるメタバースサービスとなっています。
解説「ユーザーがシェアしてくれるのも狙っている」
田中:かんぽ生命さんのメタバースは、学資保険に契約してもらうために導入したと考えられます。従来だとLP(ランディングページ)の使い方に近いでしょう。
LPと大きく異なるのは、3Dであることです。これは競合他社との差別化にも使えます。2DのLPと3Dのメタバースが2つ並んでいたとき、大体の方がメタバースのほうにアクセスするでしょう。
なぜなら、LPはただ見るだけの受動的な体験なのに対し、メタバースはアバターを動かす能動的な体験だからです。
たとえば、机の上に本とゲームが置いてあったら、ゲームを手に取るのではないでしょうか?能動的に体験できるゲームのほうが「ちょっと遊んでみたい」となりやすいのです。メタバースもゲームと同様に興味本位でアクセスしてくれます。
また、メタバースは、ユーザーが能動的に体験するコンテンツなのでLPに比べて訴求効果も高いです。
メタバース上ではゲームができるため、小さいお子さまも楽しめますし、その後ろにいる親御さんには学資保険について知ってもらえます。それをきっかけに「この子の将来のために学資保険に入っておこうかな」と思う方も出てくるはずです。
さらに、メタバースはシェアしてもらいやすいという特徴があります。LPを人にすすめることは考えにくいですが、親子で楽しめるゲームがあるメタバースなら「かんぽ生命で面白いゲームがあってさ…」とシェアしてもらいやすいです。
かんぽ生命の場合、自社サイトで「おすすめレシピ」や「ぬりえ」など親子ともに興味を持ちやすいコンテンツが用意されています。自社サイトのコンテンツで集客し、メタバースで学資保険のことを知ってもらうという流れを構築しています。
学資保険契約までの導線が、メタバースを用いることでうまく設計されている事例です。
まとめ.メタバースは集客から成約まで利用できるツール
本記事では、以下9つの保険業界の事例をもとに解説してきました。
- 事例1.プロエージェント
- 事例2.三井住友海上火災保険
- 事例3.あいおいニッセイ同和損保
- 事例4.明治安田生命
- 事例5.楽天生命
- 事例6.東京海上日動
- 事例7.朝日生命
- 事例8.アフラック
- 事例9.かんぽ生命
これらの事例から分かることは、メタバースは顧客の認知から継続的なお付き合いまで保険会社の経営に一貫して活用できることです。
ただ、一貫して活用できるといっても顧客の認知を広げるのか保険商品の契約につなげたいのかによってメタバースの使い方は異なります。自社が何に力を入れたいのかを明確にしておきましょう。
本記事の解説を担当した田中代表は「Fortniteやバーチャルマーケットなど、ユーザーが多く集まる場所でPRすることで、認知を獲得できることがわかりました。次は、認知からどのようにして契約までの導線を設計できるかが重要です」と述べています。
アフラックやかんぽ生命の事例からもわかるように、契約までの導線を確保したいなら、Webからいつでも気軽にアクセスできるメタバースを使うのがいいでしょう。
そもそもメタバースを自社に導入すべきかどうかわからない方は「自社はメタバースを導入するべきなのか?2つの判断基準をもとに解説」を参考にしてください。
また「自社だとどう使うのか適切なのか相談したい」方はお気軽にお問い合わせください。2020年から法人向けのメタバースサービスを展開している弊社のスタッフが対応いたします。
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