昨今、インターネットやメディアで注目の的となっているメタバース。まだまだ発展途上のシステムでありながら、実はすでに自動車業界でメタバース導入を進めている企業があることを知らない方も多いのではないでしょうか。
今回は自動車業界にメタバース導入するべき理由や実際の活用方法について解説します。
自動車業界がメタバース導入するべき理由
日本経済新聞によると、新型コロナの蔓延による物流の逼迫が半導体不足をもたらし、2020年から3年連続で前年度売り上げを下回っている自動車業界。
新車需要は未だ高水準を保っているものの、これから先、自動車を持たなくても良いと考える人が増えるのではないかという懸念もささやかれる中で、新たな広告・宣伝方法を模索している自動車企業も多いのではないでしょうか。
そこで、新たな広告・宣伝方法として活用したいのがメタバースです。
TVCMや店舗販売に加えて、メタバースで自動車販売の広告・宣伝を行うことは話題性だけでは収まらないメリットがあります。
メタバースで広告・宣伝を行うメリット
場所にとらわれないリアルなコミュニケーションが可能
距離的、時間的制約を取り払ってくれるのがメタバースです。ユーザー側の視点からも、企業側からの視点から見ても従来の広告・宣伝方法よりも効率的にコミュニケーションをとることが可能となります。
ECサイトにありがちな一方的なアプローチの仕方ではなく、自宅から店舗の店員さんに質問ができる環境を整えることで、ユーザーと企業の密なコミュニケーションを促進させる役割があります。
アバターを使ってのコミュニケーションをユーザーに提供できる
アバターを使って仮想空間でコミュニケーションをとるため、現実世界より匿名性が少しだけ高い状態でユーザーが参加できます。顔を見せなくてよいという安心感からユーザーが本音を言いやすかったり、ストレスなく発言できるという効果があります。
また、アバターがあることである程度の匿名性を保ちながらも、会話相手の人物像をイメージしながらコミュニケーションをとることもできます。それぞれのユーザーがオリジナルのアバターに扮して、メタバースに参加できるため、リアルと匿名の中間的な環境で関わりあうことができるのが強みです。
データを分析し、効果把握が可能
メタバースではユーザーの行動を分析し、広告・マーケティングの施策に活用することで、集客や効果把握ができます。
ここで、人々の移動手段である車を販売する自動車業界が、人々の移動を不要化させるメタバースで広告・宣伝を行うことに違和感を覚える人もいるでしょう。
一見、相対する要素を持ち合わせているような両者ですが、メタバースは企業が新たな広告・宣伝手法にチャレンジするのに最適です。
メタバースでの広告・宣伝方法
- Ad Placements
- メタバースに常に表示される広告を設置し、自社ブランドもしくは自社の製品を宣伝する方法
- Product Placements
- メタバースに自社製品を設置し、ユーザーがそれを実際に体験できるようにする方法
- Experience Placements
- メタバースに自社で作成したゲームのようなものを設置し、ユーザーがそれをプレイしながらブランド理解・製品に対する理解を深めてもらう方法
- Event Placements
- メタバースでイベントを開催し、自社ブランド・製品を宣伝する方法
メタバースは通常のECサイトなどのシステムとは違い、よりリアルに近い形での広告・宣伝ができる点が強みとなっており、柔軟性のあるアプローチをとることができると見られています。
メタバースの高い将来性
新しい広告・宣伝の場としての可能性を秘めているメタバースですが、システム単体としても計り知れないのびしろがあると考えられています。
社名をMetaに変更したFacebook社、新しいVRゴーグルの開発を始めたApple社、メタバース領域に大きな投資を行っているMicrosoft社などと世界をリードする名だたるIT企業が事業投資を行い、メタバースの関心度が急激に高まりました。
他にも、Mckinsey & Companyが2022年5月24日に出したMarketing in the metaverse: An opportunity for innovation and experimentationという記事によると、Fortniteを運営するEpic Gameをはじめとするアメリカの複数企業が、メタバース導入を発表したことで、少なくとも300億円以上の出資が集まっていることが分かっています。
このように企業がメタバースに投資を始めだしたのに加え、これからはデジタルネイティブと呼ばれる世代の人々がある程度の収入を得ることのできる年齢となっていくことで、今まで以上にインターネットを使って商品を購入することに抵抗のない人々が増えていくと予想されています。
さらに、仮想通貨の安全性が担保され、法整備なども整ってくればメタバースでのモノの売買があたりまえになる世界がやってくるでしょう。
ただ、2022年の現段階では、メタバースは未だ発展途上のシステムということもあり、アドバタイジング中心の導入方法となってくると思います。
メタバース導入事例3選
ここまで自動車業界がメタバース導入をするべき理由をプロモーション・マーケティングの観点から解説してきましたが、ここからは、実際に自動車業界でメタバース導入がされている事例をご紹介します。
日産サクラ
「国内自動車メーカーとして初めてメタバース上での新車発表と試乗会。」
日産自動車株式会社は、2022年8月20日、新型軽電気自動車「日産サクラ」のメタバース上でのお披露目会を開催しました。
四季折々の桜の風景を表現したエリアを、人々がそれぞれ好きな時間に「日産サクラ」でドライブを楽しむことができる仕様に加え、車両の充電体験や四季に合わせたボディカラーのクルマとの撮影スポットなどを準備することで、話題を集めました。
音や光の演出を駆使し、新たなデジタル上でのコミュニケーションの場を設けることで、より消費者と企業の距離を縮めながら、自社製品の購入へ繋げていきたいという狙い通りのメタバースを使った非常に効果的なプロモーションを行っています。
BMW iX1
2022年6月16日、BMWは新作の電気自動車BMW iX1を自社のメタバースで公開しました。
ユーザーがそれぞれのアバターを身にまとい、新作の車を体験できる仕様に加え、独自のメタバースで車をバックに写真撮影ができ、BMWが提供するオリジナルパーカーを着用できることが人々の関心を集めました。
BMWのメタバースはMeta社(旧Facebook)が提供していることもあり、今回の新車発表以外にも様々なイベントが計画されています。
メタバースで新作発表をすることで、ユーザーに新たな価値を提供し続けるBMWにこれからも目が離せません。
Honda ACURA
アメリカ・カナダで高級車ブランドを販売するACURAは2022年3月22日からメタバースでバーチャルショールームを開業しました。
自動車メーカー・ブランドとして初の試みであったこのイベントは、新型のインテグラの予約をした先着500名にブランド独自のNFTを提供したことでも話題を呼びました。
まだ自動車業界でメタバースが導入されていなかった2022年初期に、このイベントを企画したACURAはメタバース導入の成功事例をつくった先駆者として、大きく貢献をしたと言えます。
余談ではございますが、親会社であるHondaはこれに加え少し異なる取り組みも行っています。
現在メタバースは、ここまでご紹介してきたように商品のプロモーションを目的に活用されています。
しかし、将来的にはメタバースをさらに応用した使い方ができると考えられています。「メタバースを使った遠隔操作」つまり、仮想空間から現実世界へのアクセスが可能となるということです。
この世界のためにいち早く、研究を進めている企業がHondaなのです。
そのHondaが開発に取り組んでいるのが、VRヘッドセットを使って遠隔操作するアバターロボットです。2030年代の実用化を目指して技術実証の開始にとりかかるとしています。
多指ハンドにおいて長年の課題であった小さなものをつまむ繊細さと、固い蓋を開ける力強さを両立できる手を実現し、独自のAIサポート遠隔操縦機能の進化にも取り組んでいるため、近い将来私たちがその技術を使える日が近づいていることは間違いありません。
実際の社会での活用法は、Youtubeに動画がアップロードされているので、ぜひ見てみてください。
まとめ
今回は、自動車業界でメタバース導入を進めている事例から具体的な活用方法をご紹介しました。
自動車業界でのメタバース導入にはプロモーション・マーケティング面で多くのメリットがあることがお分かりいただけたでしょうか。
どんどんデジタル化が進んでいく世の中に対応していくためにも、メタバース導入を検討している企業の方はぜひ、参考にしてみてください。
メタバースが脚光を浴び始めた昨今、日産サクラのような事例がこの先どんどん増えていくことが予想されます。
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