
株式会社シミズオクト(以下シミズオクト)は、昭和7年(1932年)の創業以来、舞台美術や空間デザイン、警備・運営、施設管理業務など、イベントに関わる幅広い業務を担う総合プロダクションとして、多様なイベントの裏方を支え続けてきました。コンサートや展示会、スポーツの国際大会など、その快適性や安全性を守りながら、90年にわたり感動の「場」を創り出してきた実績を誇ります。
同社の業務は多岐にわたり、舞台美術や警備運営といった目に見える部分だけでなく、イベント全体を円滑に進行させるための様々な業務が存在します。
この多様性が魅力でありながら、多岐にわたる業務の詳細な内容を、学生や求職者に正確に伝えるには高い説明コストがかかるという課題がありました。これまでは対面での説明会やインターンの機会を増やすなど入社後にギャップを生まないための努力をしてきましたが、一方で、説明コストの増加により採用担当者側の過重労働が発生しており、新たな企業理解促進の手法が必要となっていました。
そこで、Urthが提供するメタバース空間「metatell(メタテル)」を活用し、オンラインでありながらイベント設営現場をリアルに再現し、学生に業務内容や企業の魅力を効果的に伝える取り組みが始まりました。今回は、この新たな挑戦に至る背景や課題、そしてメタバースを選んだ理由について、人材開発グループの倉島様、山崎様、松下様、さらに「metatell」の導入を支援したUrthの藤田が振り返ります。
学生の企業理解の向上と採用担当者の業務負担軽減が検討のきっかけ

藤田:シミズオクトさんはイベント設営という非常に実務的かつ現場感のある事業を展開されていますよね。もともとは対面で学生さんに説明会や面接を行われていたかと思いますが、オンライン化が進む中でどのような課題を感じていらっしゃったのでしょうか?
倉島:弊社の仕事内容を伝えることは非常に難しく、採用における説明コストが非常に高いことが課題でした。私たちの仕事は空間を作ることが中心です。演出や舞台構成とは異なる領域なのですが、「プロデュースできる」と思って応募される方が多いのが現状です。
例えば、説明会に100人参加していただいても、そのうちの約30人が実態とのギャップを感じて離脱してしまうことがあります。この効率の悪さを改善し、シミズオクトの業務を理解して納得した上で応募してもらえるようにする必要がありました。
また、弊社はこのギャップを極力埋めるため説明会や面談は全てオフラインで実施することを貫いてきました。その反面、直近では弊社採用部の過重労働が問題となっており、説明コストを抑える抜本的な改善をしないといけないと感じておりました。
メタバース空間で仕事の現場を再現し、学生の企業理解を促進する

藤田:特に煌びやかにみえる業界では、配属後に「想像と違った」と感じるギャップが大きいケースが多いですよね。その解決策として、これまでにどのような施策を行われてきましたか?
倉島:施策として挙げられるのは、インターンの受け入れ数を増やしたことです。しかし、それにも採用の数には限界があります。また、アーティストのステージ制作過程などを写真や動画で見せる試みも考えましたが、社内向けには見せられても、著作権の問題で社外へ発信することができませんでした。
藤田:課題の解決に挑む中で、メタバース以外の選択肢も検討されましたか?
倉島:SNSの活用についても考えましたが、先ほどお伝えした著作権の問題により、発信できるコンテンツに制約があるため、具体的にどのように活用するかが難しいところでした。
藤田:届け方としてSNSは選択肢の一つですが、業界の特性上、コンテンツ自体の制約があるということですね。そのような中、どのような理由で「メタバース」という手段を選ばれたのでしょうか?
倉島:シミズオクトの仕事は非常に分かりづらいので、いかに分かりやすく業務を伝えるかという観点でツールを探していました。弊社の仕事は職種が多岐にわたり、それぞれの詳細を説明するのが難しいです。説明会でも一時間半かけて説明していますが、一方的に話を聞くのは、学生にとっても難しいところがあり、学生の理解度も進んでいないということはいつも感じてました。
メタバースであれば、空間上にバーチャルの現場を制作することで、現場を自由に見学し、自分が好きな情報を選んで見ることができたり、アニメーションやアバターを使って仕事の内容を見せることができるため最適だと感じました。
藤田:メタバースを利用することは、見せられない部分をアニメーションを駆使して見せるだけでなく、従来の受動的な説明会と違って、学生が主体的に学ぶことができるので、企業理解を深める学習効率も高いということですね。
柔軟な対応と安心感がmetatell導入の決め手

藤田:そもそもメタバースという選択肢が生まれたのには、どのような背景があったのでしょうか?
倉島:きっかけは、Urthさんが手掛けた川越(埼玉県)のメタバースを見たことです。
Urthの川越(埼玉県)メタバースに関する詳細はこちら
川越のメタバースでは、バーチャル空間で人が動き、業務が視覚的に再現される仕組みを見て、学生に仕事内容を正確に伝えられる可能性を感じました。
藤田:他のメタバースサービスも検討されたとのことですが、なぜ弊社を選んでいただけたのでしょうか。
山崎:実際に会ってくれる会社がほとんどなかったのが印象的でした。多くの企業はリモート対応で、見積もりをお願いしても料金表が送られてくるだけで、具体的な説明がありませんでした。特に、何にどう使われているのか細かく聞きたかったのですが、それが叶わなかったのが残念でした。
Urthさんの場合、問い合わせをした際にお電話をいただき、直接お会いしてくれたのが大きな違いでした。初めての導入だったので、直接話しながら見積もりをもらえることは信頼につながりました。
藤田:見積もりや料金について、他社との違いを具体的に感じた点はありましたか?
山崎:価格が非常にリーズナブルだと感じました。他社と比較した際に、Urthさんの提案はその半分以下の価格でした。また、規模感に応じた提案をしていただいたため、具体的なイメージを持つことができました。
藤田:初めての導入で不安が多い中で、弊社の対応が役立ったということでしょうか?
女性社員:はい、料金表だけでなく、私たちの要望を聞いた上で具体的な見積もりを提示してもらえたことが非常に助かりました。また、建築士が直接対応されているという構造上、コストが抑えられるという説明も納得できました。
メタバース製作における「アニメーションへのこだわり」

藤田:メタバース空間の製作は約4か月と、比較的長期間の大規模プロジェクトでしたね。現状のメタバース空間について、何か感想やこだわりのポイントがあればお聞かせいただけますか?
倉島:こだわったポイントは、やはり施工アニメーションの部分です。養生ハリから一連の流れを見せられるようになったのは大きな成果だと思います。
例えば、家で例えるなら屋根だけをつける作業を見せることもできますが、私たちは更地の状態から建物を建てる過程を表現したいと考えました。区画を引いて距離を測り、一つ一つ作り上げる流れを見せられる点が良かったですね。もちろん、全てを詳細に見せるのは難しいですが、一連の手順をアニメーションで表現できたことは非常に意義がありました。
藤田:実際にメタバース空間が完成し、社内で披露された際の反応はどうでしたか?
倉島:新入社員に見せたところ、アンケートでは「面白い」「ステージの裏側に入れることで仕事の内容がよく分かった」「楽しい」といったポジティブな感想が多かったです。楽しみながら知識を得られる点が評価されていると思います。
また、臨場感についても好評でした。実際の現場を見ないと得られないイメージをメタバース空間で補完できたことで、入社前と入社後のギャップを埋める効果がありました。このように、社員が仕事をより具体的に理解できる環境を提供できたのは大きな成果だと思います。
藤田:プロジェクトを進める中で、不安に感じた点や苦労した点があれば教えていただけますか?
倉島:最初はリモートで完結すると思っていて、正直不安でした。フェイストゥフェイスでのやり取りが重要だと感じますが、これが画面上だけで進んでいたら、ここまでの完成度には至らなかったでしょう。藤田さんが千葉の現場まで来てくださったことが非常に心強かったです。私たちに寄り添いながら接してくださったことで、不安はほとんど解消されました。
松下:藤田さんが現場を訪れてくださらなければ、途中でプロジェクトが頓挫していたかもしれません。スタジアムにも訪れていただき、現場を直接見て対応してくださったことで、信頼度が大きく向上しました。そうした丁寧なサポートがあったからこそ、プロジェクトを最後までやり遂げられたのだと思います。
採用活動の効率化と新たな人材の発掘を目指して

藤田:最後に、今後の展望についてお伺いします。メタバースを今後どのように活用していきたいとお考えですか?また、現在考えている計画や思惑があれば教えてください。
倉島:このプロジェクトは、弊社にとって大きなターニングポイントになると考えています。20年以上、媒体を使った従来の方法で採用活動を行ってきました。説明会を実施し、誘致して選考に入るという流れで採用してきた人材が、今のシミズオクトやグループ全体を形作っています。
メタバースを導入したことで、これまでとは異なるジャンルの人材が応募してくる可能性に期待しています。弊社のメタバースを見て、新たな提案をしてくれる人材が増えることで、会社に新しい展開が生まれるかもしれません。
藤田:メタバースを活用することで、テクノロジーに明るい人材や、新しいチャレンジを求める人材が注目する可能性が高まると思います。また、業界内でも新しい取り組みとして、注目を集めるのではないでしょうか。
採用活動においては具体的にどのような部分を効率化できればと考えていますか?
山崎:具体的には、メタバース内で説明会を開催し、仕事の厳しさやリアルな一面も伝えることができる仕組みを作り、説明会と面接の回数を削減していくことができればと考えています。
現在の説明会以降の採用プロセスとしては、1次面接→2次面接→最終面接という流れになっています。一方で、1次面接は業務に関する説明が多くなってしまっているのが実態です。そのため、メタバースを活用し、まずは1次面接にかかる工数を削減していけたらと考えています。
また、面接と合わせて、2028年までに自社主催の説明会を全てメタバース空間で行うことも目標としています。
藤田:御社がメタバースを利用した新しい採用プロセスを構築し、採用領域の新しいスタンダードが作れたら面白いですね。メタバースであれば、自分の気になるところに進んで見に行くことができ、ゲーム感覚で利用することができるため、説明工数を削減しながら企業理解の促進を図ることができると思っており、採用領域においては非常にポテンシャルのある技術だと思います。
その他、将来的に考えているビジョンはありますか?
松下:そうですね。未来の話になりますが、せっかくメタバース空間があるので、社内の活用も進められればと思います。例えば、全社会議や社内イベントでメタバースを活用することで、コスト削減や効率化を図ることができればと考えています。
会社概要
会社名 | 株式会社シミズオクト |
所在地 | 〒161-0033 東京都新宿区下落合1-4-1 |
設立 | 昭和34年3月12日 |
従業員数 | 1,703人(2025年2月1日グループ合計) |
事業内容 | イベント・興行、芸能・映画・音楽、放送、セキュリティ |
WEBサイト | https://www.shimizu-group.co.jp/outline/ |

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