
「100年愛されるキャラクター(コンテンツ)作り」をモットーに、キャラクターライセンスの管理や企画開発、広告キャスティングなど、キャラクタービジネス全般を手がける株式会社マインドワークス・エンタテインメント(以下、MWE)。
これまで数多くのキャラクターをプロデュースし、時代やトレンドに合わせたプロモーション施策や商品企画、情報発信を行ってきました。
そうした中で、キャラクターのファンとより双方向的で創造的な関係性を築きたいという想い、そしてフィジカルのグッズに加えてデジタルグッズなどによるマネタイズチャネルの拡大を目指し、メタバースの導入を検討し始めました
今回の取り組みでは、MWEが手がける世界的に人気を集める犬のキャラクター「Skater JOHN(スケーター ジョン)」のオリジナル空間をmetatell上に構築。作者とファン、またファン同士が交流できるイベントを開催しました。
MWEの代表取締役・近藤様と、metatellの導入を支援したUrthの田中が、この取り組みを振り返ります。
ファンと共創する「場」づくりと、新たなマネタイズチャネル構築の挑戦

田中:まず最初に、MWE様の事業内容について、改めてご説明ください。
近藤:キャラクタービジネスにおけるエージェント業を手がけています。
キャラクタービジネスでは、商品化や企業プロモーションへの活用、ポップアップストアやイベントといった催事など、多岐にわたる施策がありますが、クリエイターである作者さんご自身だけでは、なかなか手を広げることが難しい場合も多いです。
そこで弊社は、プロデューサーのような立場で、キャラクターをより多くの方に知ってもらい、魅力を伝えながら売り出していくサポートを行っています。
田中:そうした中でどのような課題をお持ちだったのでしょうか?
近藤:キャラクターには、その魅力に共感し応援してくださるファンや、その集合体としてのコミュニティが存在します。
私たちは、そのファンコミュニティの特徴をより活かし、表現できるような「場」を作りたいという想いを持っていました。
従来のキャラクターにおける推し活は、ファンが比較的受け身で、作者さんからの一方通行的な発信にリアクションするスタイルが主流でした。しかし、「Skater JOHN(スケーター ジョン)」は、業界内でも珍しくNFT発祥という背景を持ち、ファンと共に双方向的に作り上げていくカルチャーが根づいています。
Discordなどのチャットツールを用いたコミュニティも存在していますが、テキスト中心の交流では、リアルタイムかつ空間的な一体感を醸成するには限界がありました。
そこで、より「空間」としてキャラクターの世界観が表現されており、ファンを巻き込みながら共創できる、新たなコミュニティの「場」を作りたいと考えるようになりました。
また、同時に新たなマネタイズチャネルの開拓も課題として捉えていました。
商品と聞くとフィジカルなグッズを思い浮かべがちですが、近年ではNFTや壁紙、アバターといったデジタルグッズの市場が拡大しています。
これらのデジタルグッズをメタバース上の店舗で販売することで、業界内でも先駆的な取り組みとして新たな収益源を開拓できるのではないかと考え、メタバース導入を検討し始めました。
田中:UGC(※User Generated Contentsの略。ユーザーが自発的に生成・発信するコンテンツ)の促進は、まさにメタバースならではの特徴ですね。
ユーザー自身がコンテンツ制作に参加できる環境が整っているため、現実空間以上に一体感やムーブメントを生み出しやすいです。
特に、ファンが主体的に動くカルチャーを持つジョンにとっては、非常に親和性が高い施策だと感じます。
キャラクタービジネスにおいても、これまで作者さんだけがコンテンツを作成していましたが、ファンも創作ができるようになれば、活動を通じてより多くの人にリーチできる可能性が広がりますね。
同じ想いを持つファンだけが集まれる空間を、metatellを用いて低コストで実現

田中:メタバースの導入にあたって、サービスの比較はされましたか?
近藤:はい。複数のサービスを比較検討した上で、最終的にmetatellの導入を決めました。
比較を進める中で強く感じたのは、「自分たちだけの個別空間を作りたい」という点です。
たとえば、DecentralandやThe SandboxといったSNS型のメタバースサービスでは、特定のコンテンツだけでなく、複数のコンテンツが合わさった空間が提供されています。
建築物や空間のスケールは非常に立派でしたが、自分たちに関係のない目的で訪れるユーザーも多く、世界観を共有できないと感じました。
認知度向上や新規顧客の獲得といった観点では有効だと思いますが、ファンコミュニティにおける温度感や価値観を共有する場所としては最適ではありません。
そこで、私たちは「同じ想いを持つファン同士だけが集まるメタバース空間」を作りたいと考えました。
田中:おっしゃる通り、SNS型のサービスは「共通の空間で多様な人を呼び込みたい」という思想に基づいていることが多いですから、特定の世界観を大切にしたファンコミュニティを築くには、やや難しさがありますよね。
近藤:はい。その点、metatellは建築家のスキルも活用して、自分たちだけのメタバース空間を一から設計できる点に魅力を感じました。
他社サービスは既存テンプレートを編集して空間を作成する方式が多く、また、専用ソフトを扱える前提になっているケースもあり、導入のハードルが高いと感じたのです。
田中:弊社では、建築士の方々のリソースを活用して、利用目的やストーリーに合わせた空間設計を行っています。
単なる見た目のデザインではなく、「利用者に空間でどのような体験をしてもらい、どう変化してほしいか」を考えて、設計・構築しています。
近藤:それはmetatellならではの大きな特徴だと思います。
キャラクターやコンテンツにしっかりとした世界観がある場合、metatellの自由度や表現力は非常に相性が良いと感じました。
加えて、自社専用のメタバース空間をゼロから開発しようとすると莫大なコストがかかるのではないかという不安もありましたが、metatellは導入しやすいコスト感で提供されていたため、初期ハードルを大きく下げることができた点も、選定理由の一つです。
キャラクターの世界観を表現した空間で、ファンとの一体感のあるイベントを開催

田中:今回、「Skater JOHN Park(スケータージョンパーク)」と銘打ち、ファンの新たな交流拠点として期間限定で空間を公開しました。
空間設計では、ファンがオリジナルのジョンのアバターになり、スケートボードパークを自由に散策して楽しめる仕様としました。
ブランドカラーを基調としたショップや、スケートを楽しむキャラクターたちのオブジェクトも空間内に設置し、ジョンの世界観を体感できるように工夫しています。
また、オリジナルアバターでジョンとの記念撮影ができる点も大きなポイントとなりました。
近藤:初めてのメタバースイベントということもあり、正直、どこまでリクエストしてよいのか手探りな部分もありましたが、まずは「空間を作り切ること」を重視して進めました。
田中:実際にイベントを開催してみて、どのような印象を持たれましたか?
近藤:参加者同士の一体感が生まれ、非常に素晴らしいイベントになったと感じています。
当日は約20名のファンに参加いただき、それぞれがジョンのアバターで服装を自由に変更したり、他のファンの方と会話や写真撮影を楽しんだりするなど、メタバースならではの体験ができました。
また、当日は作者さんも参加し、ファンの皆さんと交流を深めることができました。
イベント後にはX(旧Twitter)上で、「ジョンがたくさんいて可愛かった」「とても楽しかった」といった投稿も見られ、ファンの皆さんが満足してくださったことを実感できました。
田中:運営面で懸念されていたことはありましたか?
近藤:参加者の自由度をどこまで許容するかはポイントの一つでしたが、スピーカー権限を管理者側でコントロールできたため、安心して運営することができました。
また、これまで活用していたDiscordはテキスト文化が中心だったため、今回のイベントを通じて、コミュニティをビジュアライズできた感覚があり、大きな手応えを感じました。
田中:今回の取り組みを通じて、メタバースというものをどのように捉え直されましたか?
近藤:メタバースは、ファン同士やファンと作者さんが自然に交流できる「ラウンジ」のような場所だと感じました。
「ここに行けば、自分と同じ想いを持つ仲間と出会えるかもしれない」という期待感を持ってアクセスし、空間の中では一緒に時間を過ごす体験ができる場所です。
その延長線上として、デジタルアイテムやフィジカルグッズの販売にもつなげられる可能性が見えてきました。
たとえば、空間内に商品画像を設置し、クリックすると商品ページに遷移して購入できるような仕組みを取り入れたいと考えています。
加えて、アバターの衣装のバリエーションを増やしたり、参加者自身がデザインした服を自由に作れる仕組みがあると、さらに面白くなると思います。
そのデジタル衣装をNFT化して販売できれば、ファン発のコンテンツが生まれ、より活発な経済圏を形成できるはずです。
田中:ファンが自らコンテンツを作り、NFTとして販売できる仕組みが生まれれば、まさにクリエイターエコノミーが実現できますね。
場所と言語に囚われない、キャラクタービジネスの新たな市場を創造したい

田中:最後に、今後の展望についてお聞かせください。メタバースをどのように活用していきたいとお考えですか?
近藤:まず短期的には、再度イベントを開催したいと考えています。
オフラインイベントの場合、開催場所が固定されるため、遠方にお住まいのファンの方にはなかなか参加していただくことが難しいのが課題でした。その点、メタバースであれば場所を問わずに参加できます。
作者さん自身も空間に登場してファンと直接交流するようなファンミーティングを開催できると良いですね。
また、場所に囚われないことは、ファンの熱量の維持にも大きく寄与します。
従来のオフラインイベントでは、東京で開催されることが多く地方の方が来られないことが多いです。ネット通販開始時には、イベント開催時の熱気が薄れてしまい、グッズ購入がイベント時ほど伸びづらいという課題がありました。
メタバース空間であれば、世界中のファンが一堂に会し、盛り上がったその場で商品を購入することが可能になります。
田中:例えば、アバターの服やその他のスケータージョンのグッズをメタバースで販売し、それを購入した参加者で集合写真を撮るイベントを開くといった施策も面白そうですね。
近藤:まさに、そういったUGCの流れを作りたいと考えています。
メタバース空間でスケータージョン好きが自由に創作活動を行い、それをSNSなど外部に発信していく。
例えば、ファンが自作したダンスムーブを動画として拡散できれば、「このメタバース空間でこういう活動ができる」という認知が広がり、新たなファンの集客にもつながるでしょう。
田中:アバターの動きを購入できる仕組みを導入すれば、これまでリアルイベントでは難しかった形のマネタイズも可能になりますね。
ユーザー自身が自然に「発信したくなる」仕掛けを用意し、発信の場はX(旧Twitter)やInstagramといったSNSに広げていく。
この循環が生まれれば、ファン同士で空間を育てていく「共創型コミュニティ」の核になるはずです。
近藤:はい。さらに長期的には、新しい市場そのものを作っていきたいと考えています。
今、キャラクターマーケットはある程度の規模感と上限が見えている状態です。国内だけで規模を10倍に拡大するのは現実的ではありません。
しかし、メタバースを活用すれば、まるでもう一つ新しい地球を作るようなイメージで、これまでリーチできなかったファン層を取り込むことやマネタイズポイントを作ることができるかもしれません。
特にスケータージョンは、もともと海外から人気に火がついたキャラクターです。
今後はAIによるリアルタイム翻訳技術なども活用し、言語の壁を越えて、世界中のファンが一つの空間に集まれる環境を目指していきたいと考えています。
田中:リアルタイム翻訳やアバターを介した体験が標準になれば、国境を越えたファン同士の交流も自然に生まれそうですね。
近藤:はい。私は、メタバースには本当に大きな可能性があると感じています。
ファンとの距離を縮め、コミュニティを活性化させるだけでなく、新たな市場拡大の原動力にもなり得る。
今回の取り組みを一つのきっかけに、さらに可能性を広げていきたいですね。
会社概要
会社名 | 株式会社マインドワークス・エンタテインメント |
所在地 | 千代田区六番町6番地20-805 |
設立 | 2004年4月14日 |
従業員数 | 2人 |
事業内容 | キャラクターやインフルエンサーのライセンス/プロデュース業務 |
WEBサイト | https://mindworks-ent.jp/ |

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