
イーケーエレベータ株式会社(以下、イーケーエレベータ)は、1964年の創業以来、産業用エレベータの専門メーカーとして、主に荷物や自動車を運搬するエレベータを中心に事業を展開してきました。一般的な「人が乗るエレベータ」とは異なり、同社が手掛けるのは「どんな荷物をどう運びたいか」という顧客の多様なニーズに応える一品一様のオーダーメイド製品です。大手メーカーが手掛けにくいニッチな市場で、設計から製造、設置、メンテナンスまで一貫して行い、日本のモノづくりを支え続けています。
この独自の技術力とオーダーメイド対応が強みである一方、BtoB(企業間取引)かつニッチな事業領域のため、学生や求職者への知名度が低いという採用課題がありました。さらに、製品のスケール感や実際の動きを伝えようにも、納品先である工場の機密情報保持の観点から、稼働中の様子を動画や写真で自由に公開することができない、というBtoBメーカーならではのジレンマも抱えていました。
これまでは「来社」し「体験」してもらうインターンや工場見学に注力し、高い満足度を得ていましたが、オンライン化が進む中で、そもそも学生が「来社する」までの動機づけが難しく、製品の魅力をオンラインで伝える新たな手法を探されていました。
そこで、Urthが提供するメタバース空間「metatell(メタテル)」を活用し、オンラインでありながら、普段は見せられない工場の内部やオーダーメイドエレベータの迫力あるスケール感をリアルに再現。学生に事業内容や企業の魅力を効果的に伝える取り組みを始めました。
今回は、この新たな挑戦に至る背景や課題、そしてメタバース及びメタテルをオンラインでの魅力伝達の新たな手法として選んだ理由について、同社で採用活動をはじめ会社全体を統括されている伊藤様(以下、伊藤)、及び「metatell」の導入を支援したUrthの藤田(以下、藤田)が振り返ります。
産業用オーダーメイドエレベータの独自性と魅力

藤田: まず初めに、貴社の事業内容について簡単にお聞かせいただけますでしょうか。
伊藤: 当社は、主に産業用の荷物や車を運搬するエレベータを専門に扱うメーカーです。皆さんが普段利用される「人が乗るエレベータ」は、大手メーカーがJIS規格に沿って大量生産しています。
それに対して私たちが手掛ける荷物用エレベータは、お客様の「どんな荷物を、どんなふうに運びたいか」というご要望が一つひとつ異なります。そのため、都度ご要望を伺って設計し、一品一様のオーダーメイドで製造・設置、メンテナンスまで一貫して行っています。大手メーカーがやりたがらない、中小企業だからこそ活躍できるニッチな市場で事業を展開しています。
藤田: その中で、伊藤様はどのような役割を担っていらっしゃるのでしょうか。
伊藤: 私は、営業から設計、製造、メンテナンス、時には経理まで、会社全体の業務を統括する役割です。その中でも特に、社長と共に採用活動を中心的に担当しています。
「見せたくても見せられない」BtoBメーカーならではの採用課題

藤田: 今回、採用活動への活用を視野にメタバースをご導入いただきましたが、導入前はどのような課題をお持ちでしたか?
伊藤: 一番の課題は知名度の低さです。全国はもちろん、地元県内でも「そんな会社があるんだ」という反応が大半でした。新卒採用は2017年卒から始め、ナビサイトなども活用していますが、学生さんの「食いつき」が悪い、つまり興味を持ってもらいにくいという悩みがありました。
藤田: エレベータというと身近な製品ですが、産業用となるとイメージが湧きにくいのでしょうか。
伊藤: おっしゃる通りです。ホームページや写真、口頭での説明だけでは、私たちが作っているエレベータのスケール感や実際の動き、仕事の面白さがなかなか伝わりません。「単純なエレベータを作っている会社」と誤解されてしまうこともありました。
藤田: PR動画なども活用されていましたよね。
伊藤: ええ、動画制作も試みましたが、大きな壁がありました。BtoBの特性上、納品先であるお客様の工場や倉庫内部で稼働している様子を撮影しようとすると、お客様の製品や機密情報が映り込んでしまいます。情報漏洩のリスクがあるため、自由に撮影・公開することが難しいのです。
結果として、お見せできるのは引き渡し前の工事中の写真などが多くなり、製品の本当の魅力を伝えきれていませんでした。
藤田: 学生に魅力を伝えるために、工夫されていたことはありますか?
伊藤: やはり「体験」してもらうのが一番だと考え、インターンに力を入れてきました。自社のテストタワーで実物を見てもらったり、お客様先でのメンテナンスに同行して、普段は絶対に入れない工場の裏側を見てもらったりします。
体験してくれた学生からは「すごく面白かった」と非常に好評です。事務希望の女子学生が参加して楽しんでくれることもありました。
藤田: やはり、リアルな体験のインパクトは大きいですね。
伊藤: はい。ですから当社は採用において「対面」を重視しており、コロナ禍であってもオンラインでの説明会や面接は一切行いませんでした。わざわざ足を運んでくれる熱意を大切にしたいからです。
ただ、その「会社に来てもらう」までの物理的なハードルが高いことも事実です。オンライン化が進み、伝えられる情報が限られている中で、どのように他社と差別化し、どうやって全国の学生に最初の興味を持ってもらうかを悩んでいました。
キャラクターの世界観を表現した空間で、ファンとの一体感のあるイベントを開催

藤田: 様々な課題がある中で、今回メタバースというソリューションを選ばれた決め手は何だったのでしょうか。
伊藤: これまで漫画を使った会社紹介なども試み、既存の手法はやりきった感がありました。そんな時、Urthさんからメタバース活用の電話営業をいただいたんです。
私自身はゲームをしませんが、「メタバース」という言葉は知っており、教育現場などでの活用事例も耳にしていました。動画では見せられなかったモノを、仮想空間なら情報漏洩のリスクなく表現できるかもしれない、という期待がありましたね。
藤田: 他のメタバースサービスとの比較はされましたか?
伊藤: いいえ、全くしませんでした。実際にお話を伺って「これはいけるかな」と直感しましたし、代表の田中社長と直接お話しする中で信頼できる会社だと判断し、この出会いを信じて「オンリーワン」で決めました。
「できる理由を考える」社風が後押しした新技術の導入

藤田: 「メタバース」という新しい技術の導入に対して、社内での抵抗はありませんでしたか?
伊藤: 全くありませんでした。「私がやろうと思っている」と話すと「はい」という感じです。社長や社員も「どんなものができるんだろうね」と期待してくれています。
もともと先代から、難しい案件にも「できない理由ではなく、できる理由を考えよう」と挑戦してきた社風があります。新しい取り組みに対しても非常に前向きですね。
藤田:現時点でメタバース空間は完成前の状況ですが、制作プロセスはいかがでしたか?
伊藤: 週に一度の定例会や工場見学を通じて、私たちが伝えたい「大きさ」や「裏側」といった非言語的な魅力も汲み取っていただき、少しずつ形になっていくのを楽しく見ていました。忠実に再現しすぎても見る側が疲れてしまうので、その「最大公約数」をうまく表現できていると感じています。
採用の「入口」から、地域貢献まで。広がる活用の展望

藤田: 完成したメタバース空間を、今後どのように活用していきたいとお考えですか?
伊藤: まずは採用活動です。説明会にエントリーする前の「入口」として、学生さんにメタバースを体験してもらい、「面白そうな会社だな、行ってみようかな」という来社への動機づけに使いたいです。 将来的には、エレベータが出来上がっていく他の製造工程や、現場での設置の様子などを追加したり、社員が取り付けをバーチャル体験できるような社内研修にも活用できると面白いですね。
藤田: 採用以外での活用もお考えですか?
伊藤: はい、地域のイベントでも活用したいです。直近では、11月に高崎商工会議所が主催する「高崎産業祭(モノトピア)」に出展し、皆さんにもお披露目する予定です。 これまでもイベントで模型を作成するなどしてきましたが、次はメタバース体験を加えたいと考えています。地元の小中学生などにも「あの会社、こんなことやってるんだ」と知ってもらい、将来の認知度向上や地域貢献にも繋げたいですね。
藤田: 最後に、メタバースはどのような企業におすすめしたいと思われますか?
伊藤: 私たちのように、地元で少し特殊なモノづくりをしている企業や、BtoBがメインの企業に良いのではないでしょうか。
特に、お客様との守秘義務や権利の関係で、自社の優れた技術や製品を動画や写真で自由に見せることができないというジレンマを抱えている企業は多いはずです。仮想空間であれば、そうした制約なく自社の魅力をリアルに表現できる。これは大きなメリットだと思います。
会社概要
| 会社名 | イーケーエレベータ株式会社 |
| 所在地 | 〒370-3104 群馬県高崎市箕郷町上芝688番地 |
| 設立 | 1964年7月25日 |
| 従業員数 | 95人 |
| 事業内容 | 産業用エレベーター(荷物用、人荷用、自動車用)の設計・製造・設置施工・保守管理 |
| WEBサイト | https://www.ekelevator.jp/company/index.html |

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